さまざまなエリアや働き方をご紹介していく本企画。今回は、美容業での開業資金を集めるために飛び込んだ銀座のニュークラブで、ナンバーワンを獲得するなどして活躍したのち、新たなキャリアを構築中の ともみさん にお話を伺いました。
今回のインタビューのお相手
名前:ともみさん
ナイトワーク歴:船橋にて半年勤務後、銀座のニュークラブにて4年3ヶ月勤務。
銀座の店ではナンバーワンを獲得するなど、売上を積み重ね、2019年2月に自己最高売上を記録して、惜しまれつつ退店。
現在は新たなチャレンジができる店舗を探している。
市場を変えてすぐ、ほぼ初心者からナンバーワンに
-ともみさんがナイトワークを始めるきっかけは何だったのでしょうか?
わたしは元々は美容師として、9年間働いていたんです。
その中で、ヘッドスパの施術に興味を持ち、自分で店を開きたいと思うようになっていきました。
美容師としてだけではどうしても資金が稼げないので、昼間はヘッドスパの勉強をしつつ、夜はナイトワークで資金を稼ごうと思ったのが、ホステスとなったきっかけです。
最初、千葉の船橋のお店で半年間、週一で働いていたのですが、そこがあまりにも若い子の多い店で、自分とカラーが合わなくて。
この仕事向いていないのかな…と悩んでいたら、偶然席に着いたお客様に「君は銀座に向いているんじゃないか」と言われ、銀座に移ってきたという経緯でした。
-銀座のお店はどんな形態だったのですか?
ニュークラブという名前で呼んでいましたが、システム的にはいわゆるキャバクラです。
前の月の売上で、次の月の時給が決まるというシステムで、売上もキャスト同士が見えるよう、グラフとして公開されていました。
-ともみさんが最初にナンバーを獲得したのはいつでしたか?
入店初月は、本指名が一本だけで、売上はたった23,000円だったんですよ(笑)
そこから徐々に売上を伸ばし、5ヶ月目でナンバーワンになりました。
その後は売上の上下はありつつも、ナンバーワンを獲得したり、ナンバー3以内に入る回数は増えていきました。
当時は、店舗責任者から「売上の単価よりも、指名の本数を伸ばすよう」アドバイスをいただいていたので、より多くのお客様に支持されるように努めていました。
相手への思い込みは捨てる。自分にできることをコツコツとやることがポイント
-自分をご指名のお客様がゼロの状態から、ナンバーワンになっていくためには、相当な努力があったのではないでしょうか。意識したことは何ですか?
わたし、入店してすぐは、周りから「田舎くさい・イモっぽい」と笑われていたんです。
だからこそ、「そんなわたしでもできる」という前例を作りたかったというのがモチベーションでした。
同じように未経験で、垢抜けないコでも、努力次第で成績を出せるんだという、希望になりたかったんです。
そこで、ひたすらお客様に連絡をとるようにしました。
連絡とるだけなら、誰でもできますから。わたしはその誰でもできることを、誰よりやろうと思いました。
最初はお客様とのメールやLINEのやりとりのコツがわからなかったので、先輩ホステスたちにご指導いただきました。男性の気持ちを知りたかったので、男性スタッフにもアドバイスをもらいました。
どんなお客様とも、LINEをするよう心がけましたね。
「この人が繋がるかどうかというのは、わたしの思い込み」だと思うようにしていました。
いつ誰がどんな形で繋がるかは誰にもわかりません。
脈なしだと思っていた方が、足繁く通ってくださるお客様になる可能性もありますし、初回で使っていただく金額が少ないお客様が、二度目は団体で来てくださることだってある。
思い込みを捨てて、決めつけないように意識していました。
-ともみさんのLINEテクニックを教えてください。
わたしは電話が苦手なので、基本LINEでコミュニケーションをとっていました。他愛ない会話を繰り返すだけでも、ずいぶんと関係性は深まるものです。
むしろ、「来てください」というLINEを送ったことは、一度もありません。イベントのご案内くらいでしょうか。
もちろんヒマな日もありますが、それでも焦らず、淡々と同じことを繰り返していました。
ヒマな日にはヒマを味わい、「普段来ていただけることは当たり前じゃないんだ」と再確認し、よりいっそうがんばろうと奮い立たせる日にしていましたね。
LINEばかりしていて、結局あまり来店には繋がらなかったお客様もいましたが、それはそれで良いと思っていました。
それでも繋がったのが何かの縁ですから、どうせ出会ったなら、人として長く付き合えたらそれで良いかなと。
毎日LINEをたくさんしていると「つらくならないですか?疲れませんか?」と聞かれることもあるのですが、仕事の一環だと思って、ひたすら淡々とやっていましたね。
-フリーで来店したお客様の心を掴み、場内指名に繋げるために、初見で意識していたことはなんですか?
目を合わせ、相手の話を聞くように努めていました。
あとは、名刺交換から始め、相手のお名前を伺ったら、そこからトークを展開させていました。
珍しい名字なら、そこから出身地などの話題にもなりますし、ありふれた名字なら、ニックネームをつけて親しみやすさを感じてもらうようにしました。
わたしをご指名してくださるお客様には、◯
◯さん、とお呼びしてる方はあまりいないですね(笑)
お客様も「そんな風に呼ばれるなんて新鮮」といってくださり、くだけた感じで話が進められていました。
困ったお客様に振り回されない
-これまでの接客の中で、特に印象に残る困ったエピソードはありますか?
実はわたしは、接客においてはあまりキツイと思うことはないのですが…
一度「結局あれはどうするのが良かったんだろう」と思ったのは、何を話しかけても無言、こちらが話すと怒る、お酒を作っても怒る…というお客様ですね(笑)
開き直って、わたしも黙っていました(笑)
あとは、席に着いてすぐ無茶振りをし、その対応が気に入らないと攻撃してきて、店にもクレームを入れたお客様もいらっしゃいました。
ただ、そういうお客様にあたって思うのは、「こういう人は何百人、何千人に一人なのだから」ということですね。
なのでほとんど気にしません。それくらいなら、いつも来てくださるお客様に対して、悩んだり考えたりする時間を作りたいので。
わたしをご指名してくださるお客様との間にも、トラブルが起こることはありますが、多くはお酒が入ったからこそのトラブルなので、「こんなことで不仲になるわけはないな」と淡々としていました。
ホステスの仕事の醍醐味は「人間関係」
-最初からスムーズに仕事はできましたか?
いえ、かなり苦労しましたね。
元が美容師だったので、接客には自信があったのですが、美容師って技術ありきで接客できる仕事だと思うんです。
ホステスの接客には、美容師のような特殊な技術がない分、自分だけが商品です。
だからこそ最初は焦りました。
また、わたしはかなり問題児だったと思いますよ(笑)
未経験だから仕方ないと言えばそうかもしれませんが、基本的な夜のルールや御法度を知らなかったので、同僚やお客様に相当ご迷惑をかけていました。
飲みすぎて寝てしまい、バックヤードから戻って来ないなんてことも何度もありました(笑)
周りの同僚ホステスやスタッフが協力的で、良い方ばかりだったので、そのおかげでここまでやって来られたんだと思います。
-ともみさんの話を伺っていると、非常に「淡々としている」印象があります。感情に左右されたりはしないのですか?
あまり浮き沈みはありませんね。店のスタッフからも「プライベートが謎」とよく言われていましたが(笑)
自分に対しての負けず嫌いなんだと思います。
売上を競争する店でしたし、周りが売上を上げていると一瞬焦るのですが、わたしにできることは日々のことをコツコツとやり続けることだと思っていました。
「できなくても死なない」くらいの気持ちで、目標に対して考えていましたね。
焦ってもどうにもならないですし、お客様も来れないときは来れませんから。
-これまでで一番、楽しかったことはなんですか?
店を辞めるときに、過去最高の売上を上げることができたのですが、最後の3日間は最高に楽しかったですね。
売上の半分以上は、その3日間で作ることができたと言っても過言ではありません。
というのも、目標達成に向けて走る中で、自分の殻を破ることができたことが大きいです。
今まで売上を上げるために、席で何かをおねだりするということがほとんどなかったんです。
それをしたら人が離れて行ってしまうのではないかと怖くて。
けれど、その3日間は、「今まで怖くて言えなかったんだけれど、今回は最後だからお願いしたい」と素直にお客様に甘えることができました。
恐怖も開示できて、正直になれたんです。
その結果、たくさんのお客様から、卒業祝いのシャンパンなどを入れていただき、一度は飲んでみたかったお酒も入れていただくことができました。
-ともみさんの思う、この仕事の醍醐味は何ですか?
わたしは当初、開業資金を2年間で貯めて、すっぱりナイトワークを辞めようと思っていたんです。
それが、仕事が楽しくなり、気づいたら4年以上続けられて来たのは、やはり人とのご縁に価値を感じたからだと思います。
お客様と時には、「ホステスとお客様」という関係以上の人間関係を、構築できることの素晴らしさを感じられています。
お客様の中には、人として可愛がってくださり、わたしのプライベートの友人まで大切にしてくださる方もいます。
お互いの悩みや家庭の話まで話せるお客様もいます。
そういった人間関係をつくれることが、この仕事の醍醐味だと思っています。
-長く勤めたお店を辞めたのはなぜですか?
開業の準備ができたらホステスは辞めようと思っているのですが、その前に、もっと色々な世界を経験したかったというのが大きいです。
わたしはクラブなど、違う業態の店にすごく苦手意識を持っていたのですが、「苦手なことだからこそチャレンジしてみたら面白いんじゃないか」と思うようになりました。
これは、昨年ホノルルマラソンに参加し、初めてフルマラソンに挑戦した経験から学んだことです。
できないかも…やれるかな…と思っていたフルマラソンに挑戦し、完走したことで、「苦手だと思っていたものが本当は好きだと気づけた時の喜び」や「乗り越えた達成感」を味わうことができました。
仕事でも同じかなと思うようになり、挑戦してみたいと思うようになりました。
今は、これまでとは違ったチャレンジができるお店を探しているところです。
編集後記
淡々と話すともみさん。当たり前のことを人一倍、黙々とやるからこそ得られた成果だったのでしょう。
謙虚で前向き、利益よりもお客様本位の姿勢が、支持される理由なのだと感じました。
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